書評:【ゼロ・トゥ・ワン】君はゼロから何を生み出せるか 【違いをみつけろ!】どんなビジネスも答えを出すべき7つの質問

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書評

1998年にPayPalを共同創業し、2002年に15億ドルでeBayに売却したことで、シリコンバレーで最も注目される起業家・投資家となったピーター・ティールのスタンフォード大学の学生向けに行った「企業論」の講義をもとに書いた一冊です。

「起業」「ゼロから1を作り出す」的なビジネス的な記述だけでなく、人事や営業といった実務的・経験者目線での含蓄のある言葉や、再現性のある事業成長に向けた不確定な未来への指針的なものになっています。

投資的な視点でのティールの主張は「独占」「競争をしない」「特異性」であると自分は思いました。

ジャンル:

セールス・マーケティング、起業

内容:

読者対象
・起業家、起業志望者
・大企業で働き、思考法を身に着けたいと思っている人
・「雇われ身分」で良しとしない人

1990年代の振り返り

ドットコムバブルの熱狂が取り上げらることが多いが、1992年まではインターネットは商業利用は制限されており、1993年4月のブラウザ「モザイク」からすべてが始まった。

1996年、FRBグリーンスパン議長の「根拠なき熱狂」、1997年7月のアジア通貨危機、1998年8月ルーブル危機と懸念がたくさんあるなので、「インターネットに頼る以外ない」という状況もあり、ドットコム・バブルは拡大していった。

1998年9月から2000年3月までの18カ月に起こった、シリコンバレーに起こったゴールドラッシュ、それをその内部から見た、生き証人として記しています。

ドットコム・バブルの崩壊から学んだ4つのこと

1.少しずつ段階的に前進する事
2.無駄なく柔軟であること
3.ライバルの物を改良する事
4.販売ではなくプロダクトに集中する事

しかし、ティールは以下の4つが大事であると強調している。

1.小さな違いを追いかけるより大胆にかけた方がいい
2.出来の悪い計画でも、ないよりはいい
3.競争の激しい市場では収益が消失する
4.販売はプロダクトと同じくらい大切だ

すべてを逆にする必要はないが、「大勢の意見に反対する事ではなく、自分の頭で考えることが必要である」と。

独占

市場の独占こそが利益の源泉である。だからこそ、Googleのような独占企業はその独占性を否定し、ベンチャー企業はその独占性を騒ぎ立てる。ただ、例えば、IBMのハードウェア、AT&Tの電話市場など、その独占性は時代とともに移り変わる。独占はすべての成功企業の条件である。

競争・戦争すべきところとすべきでないことろ

Googleとマイクロソフトが争っている間にAppleに抜かれてしまったこと、イーロンマスクと合併交渉を行いネット・バブルの崩壊を乗り切った話。

終盤を制する(ラストムーバー・アドバンテージ)

ニューヨークタイムズとTwitter、どちらも数千人の社員と数万人へニュースを届けているが、Twitterは赤字にもかかわらず、時価増額でニューヨークタイムズの12倍の評価を受けていた。それは新聞の独占の終了であり、「このビジネスは10年後も存続しているのか」という質問に真摯に向き合い続ける必要がある。

ゲーム開発会社「ジンガ」やクーポン発行「グルーポン」は、気まぐれな消費者に受ける物を作り、リピーターに満足してもらうのかという長期的な問題から目をそらしてしまった。

そんな10年後にも存続している・価値を生み出している企業に必要なものは
1.プロプライエタリ・テクノロジー
 2番手よりも少なくとも10倍は優れている独占的優位性もしくは10倍の改善
2.ネットワーク効果
3.規模の経済
4.ブランド

 本質よりもブランドから始めるのは危険

ネットワーク効果については 書評:【ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか】 【違いをみつけろ!】での3.スイッチボード利益モデルが参考になると思います。

独占を築くために

テクノロジー、ネットワーク効果、規模、ブランドを組み合わせることで独占を目指すことはできるが、それを成功させるためには慎重に市場を選び、じっくりと順を追って拡大しなければならない。

小さく始めて独占する:スタートアップが狙うべき市場は、少数の特定ユーザーが集中していながら、ライバルがほとんどあるいはまったくない市場

規模拡大:アマゾンが極めて意図的に本から始めたように、自己規律を持ちながら正しい順序で市場を拡大する

破壊しない:市場全体のパイを広げるような、想像に力を注ぐ

ラストムーバーになる:先手を打つのを手段であって、目的ではない。特定の市場で一番最後に大きく発展して、その後独占的に利益を享受する事

成功は運か実力か

偶然を排除し、しっかりとした計画・目標に基づいた行動を行うこと。
起業・ベンチャー投資は正規分布ではなく、べき分布(極端な値をとるサンプルの数が正規分布より多く、そのために大きな値の方向に向かって曲線は長くて、なだらかにすそ野を伸ばす手特性がある)である。

リターンが80:20の法則に従うのと同様に、そこにつぎ込む時間も80:20のべき分布になる。

べき分布・べき乗数を正しく理解することで自分の位置・行動がどこにあるかを常に意識する必要がある。

隠れた真実

本書の一番最初に出てきた「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か?」のビジネス版の質問は「誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?」というものになるはずで、実際、どんな企業なのだろうか?目の前にあるのに誰も気づかない世の中の真実とは何であろうか?

ティールの法則
人事

・誰と始めるか

・所有(株主)、経営(実際の運営)、統治(正式に統治)するのは誰か?

・現金報酬は未来よりも現在を優先させる

・20番目のエンジニアとして君の会社を選ぶ理由はなんだろう?(会社の使命とチームについて)

・スタートアップは外から見たときに社員が同じように違っていなければならない

・内部の縄張り争いが組織をむしばむので、対立を減らす

営業

・作るだけでは買い手はやってこないし、売ろうと思わないと売れないし、それは見かけより難しい

・最高のプロダクトが勝つとは限らない

・平均販売単価と販売方法、そしてそのボトルネック

・バイラル成長の可能性のある市場では、一番重要なセグメントを最初に支配した会社が市場全体のラストムーバーとなる。最も価値の高いユーザーを最初に獲得しよう!数・認知率・頻度・個数・単価を確認しよう。

・販売のべき乗数を正しく理解する

・プロダクトだけでなく、企業ブランドも営業する必要がある

人間と機械(AI)の今後

・ここから数十年の間に最も価値ある企業を作るのは、人間をお払い箱にするのではなく、人間に力を与えようとする起業家である

・人間とコンピューターの補完的な関係(人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどう助けられるだろうかと考える)

どんなビジネスも答えを出すべき7つの質問

1.エンジニアリング(段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術か?)

2.タイミング(今が適切なタイミングか?)

3.独占(大きなシェアが取れるような小さな市場から始めているか?)

4.人材(正しいチーム作り)

5.販売(プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?)

6.永続性(この先10年、20年と生き残れるポジショニングか?)

7.隠れた真実(他社が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか?)

テスラはこの7つの質問にすべて答えた。起業家は発想を独自の計画に落とし込み、小さい規模から始めることで、マクロトレンドから恩恵を受けることができる。

創業者とは

偉大な創業者は、彼ら自身の仕事に価値があるから重要なのではなく、社員みんなから最高の力を引き出せるから重要なのである

その他:

スタートアップの成功については「たいろー」さんのこのツイートとVoicyが参考になると思います。

#344 ふろむださんの問いが深い件 | たいろー(森山大朗)「Work in Tech!」/ Voicy - 音声プラットフォーム
音声放送チャンネル「たいろー(森山大朗)」の「#344 ふろむださんの問いが深い件(2021年8月23日放送)」。Voicy - 音声プラットフォーム

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